Cocoのポケット

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リップヴァンウィンクルの花嫁

昨日は、1日お休みでした。

午前中、部屋でダラダラしながらブランチを食べ、なんとなく部屋を片付け、午後になってから出かけました。途中で寄った古本屋さんで、ずうっと欲しかった漫画の新装版(超カワ)を108円という破格で見つけて、迷わず購入しました。ウキウキ気分でいつものカフェに向かい美味しいパスタとチーズケーキ、あといつもの抹茶ラテを飲んでゆっくりしたあと、下高井戸シネマへ向かい、リップヴァンウィンクルの花嫁を観ました。

 

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なのでね。

今日は、その映画について書こうと思うのです。

自己満の、登場人物達への感想を綴ってるだけなので、この映画を観てない方はわけわかんないかもしれないし、これから観るかもって方はネタバレふざけんな、ってなるかもしれなくて、まず読まれる事を前提にして書けたものではないのは重々承知なのですが、よかったら、読んでください。長いけど。


久しぶりに、頑張って書けたなと思うものなのです。

…長いけど。

 

 

 

 


まずあの、本当に、あらすじとか書くの本当に、苦手なのですが、一応、書いてみます。。。

 

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派遣教員の七海(黒木華)は、お見合いサイトで知り合いあっさりと手に入ってしまった彼氏と、あっさりと結婚をします。挙式の際の親族が少なかったため、代理出席を「なんでも屋」の安室(綾野剛)に依頼します。
新婚早々、夫の浮気が疑わしくなり、安室に探偵を頼んだ七海ですが、義母から逆に浮気の罪をかぶせられ、家を追い出されてしまいます。
夫とは離婚。住む家もない。苦境に立たされた七海に、安室は”バイト”を提供するようになります。月100万円の報酬がもらえる住み込みのメイドの仕事で七海は真白(Cocco)と出会い、彼女達は虚構のように広い豪邸で、2人暮らしを始めます。お金を使わずにはいられない真白はある日ウェディングドレスを買いたいと言い出して…。

 

といった流れです。(わ、わかってもらえるかな、これ)

 

岩井俊二監督の作る映画は、ワンカット、ワンカットが本当に綺麗で。七海を演じる黒木華さんが、本当にかわいかった。特に、眠っているシーンなんてかわいすぎて、溜息が出ました。私の中では、女の子を撮らせたらピカイチの監督さんです。お話の内容もいつだって、虚構と現実のバランスが絶妙で、自分には絶対に起こりそうもないような事なのに、こういう歪なジェットコースターみたいな事は、貴女にもいつだって起こり得るのよ、って語りかけてくれるようですごく好きです。「スワロウテイル」と「花とアリス」が超絶にオススメです。今回の「リップヴァンウィンクルの花嫁」も、この2つには負けるけど、オススメに加わりそうです。

 

 

…話が逸れました。

 

 

 

 

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主人公の七海は、優しいけれど、本当に自分を持っていなくて、ふらふらしていて、危なっかしい人でした。人の言うことに、ええ、とか、そうですね、とか言って生きてきたから、なんとなく人や状況に流されてしまうし、すぐに騙されてしまうし。もう、そんなことしてたらきっと悪い方向にいっちゃうよ!と思ってたらああやっぱり、みんなが不幸と呼ぶ穴に落っこちちゃいました。。。自業自得、といった事も思ってしまったなぁ…でも、騙され続けた七海ちゃんだけど、最後は不幸なんかじゃなかったと思うな。

 

そう。七海ちゃん、と呼びたくなるほどの愛らしさが彼女にはあって、これは勿論、黒木華という女優さんと、その可愛らしさをこれでもかというくらい引き立ててくれる岩井俊二監督のカメラワークの凄さありきなんですけど、結局は、七海ちゃんの”優しさ”の力だったんだろうなぁと思います。知らない、ということの上の優しさ。その純真無垢な優しさを、騙され続けることで守ってくれた七海ちゃん。いいなぁ。きっと私には一生かかってもなれない存在だけど…。

 

 

 

 

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一方でCocco演じる真白は、変わり者。破天荒でうるさくて、贅沢を好む。お金を使わずにはいられない。そんなひと。彼女は、


「コンビニとかスーパーで買い物して、その人達の手が、手がね、自分なんかのために袋詰めしてくれるの。それをね、見てるだけで幸せで堪らないの。私にはね、幸せの限界値っていうものがあってね、それがくるのが早いの。誰よりも早く。ありんこより早く。だからそれ以上はお金で買う。その方が楽なの。じゃないと、壊れちゃうから。」


なんて言う。
この世界には幸せが沢山あって、彼女は少しの幸せでさえも受け取ると壊れてしまいそうになるから、それをお金で買ったのです。お金でわざと曇らせて、怖くないようにしたの。だけどきっと彼女は、幸せを、嘘やお金の中にかこって保険をかけた歪んだ世界で、それでも本当の幸せを願ったの。そしてそれを見つけたの。見つけて終えたの。そんな気がします。

 

私は、私の幸せの限度は、きっと低くない。真白が言うみたいに幸せを受け取って壊れてしまいそうになる事は、少ない。一切ないわけじゃないの、けど、そんなのはごく稀。
幸せの限界値なんてわからない。だって私は、欲張りだから。だけど、だから「人からの真心を、その幸せを受けるに値しないなぁ、私は。」と思うことがある。だって私は心の底はこんなにも捻くれていて、寂しくて、乏しくて、惨めになるのが嫌で、なんとなく笑って余裕があるフリをして、取り繕ってばかりいるから。そうしているうちに上手く立ち回れなくなってきて、気づいたら知らないうちに、人を傷つけてしまっていたりするから。
そんな私は幸せになれなくても仕方ないな、と思うけど…でもね、良い人の側でありたくて、自分の違和感を騙して「なんとなくわかる」と言い切ってしまっていたであろう頃の私よりは、好きです。自分のこと。
そうやって一つ一つ見つけられるから、いろんな方向に進めるから、映画はいいですね。

 

 

 

 

 

 

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「そんな、虫のいい話があるんでしょうか。」
と聞く七海に
「そんな虫のいい話を仕事にするのが、僕の仕事。」

 

と言い放つ安室(綾野剛)は、なんでも屋。どんな所にもお金を生み出す才があって、胡散臭くて、やってる事は相当ゲスいはずなのに、言葉巧みに寄り添ってくる彼の仕草や表情、佇まい、空気感。みんな嫌いにはなれなくて、結局は翻弄されてしまう。だけどそれは、本当は、怖いことなんだ。痛くないし苦しくないのに、いつの間にか動けなくさせられてしまう、まるで底なし沼のような、毒のような、そんな人。得体の知れないひと。最後の、酒盛りの時の彼は、嘘なのかな、本当なのかな。それさえも良く分からない。きっと彼にしかわからないし、もしかしたら彼にもわからないのかもな。

この映画での綾野剛は、怪演、という言葉がぴったりだったな。終始、胡散臭くてたまらなかった。なのに、嫌味がなかった。愛おしくさえあった。安室は綾野剛さん本人のようですね、と言われていることに納得してしまう。

 

 

 

 

 

 


帰り道、飲み会帰りの数人の大学生がいて、1人はゲロを吐いていた。ほろ酔いの男の子が、ほろ酔いレベルに+2したくらいの女の子の肩を支えて、上機嫌だった。世田谷線の電車内は、冷房が、来る時よりも強かった。分厚い本を持った疲れた顔のおじさんが隣に立っていた。一輪のピンクのバラをそれぞれ手に持った、3人の女の人とすれ違った。
なんでもないような事だ。

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当たり前だけど、東京には人が沢山いて、みんなそれぞれ違う生き方をしてる。私の知らない生き方が、すぐ近くに数千。前後左右に並び、すれ違う。SNSの世界を含めれば数千万人と散らばっているけれど、私はその、そこらじゅうに散らばり、動き、生きる中のほんの少ししか知らなくて、むしろたったひとつ、自分を見る、それだけで精一杯。
だから他人の事がわからない。この映画の中の人達は、私が予測するのと違う事ばかりしていた。予測と違った展開を見せつけられて、あれ?この人はそうするんだ?と思うの。けれど次の瞬間、あぁ確かに、この人はこうするのが自然じゃないか。どうして気づけなかったんだろう。とさえ思ったの。私の予測を裏切るその人の行動には、無理がなかったから。そうです。誰かの当たり前に気付けるほど、私はその誰かを知らないのです。

けれど交錯して、幸せも不幸せも与えあってる。不思議。軀も頭脳も心も言葉もあるのに、私たちは何も知らない。端末の画面と睨めっこして、いろんな人と繋がった気持ちでいる。それで、この世界は不幸だとか、優しさで溢れてる、だとかって思う。


その事が不思議でたまらなくなった。

ただ街で人と交錯し続けるだけ、という無意味な感覚が、愛おしくてたまらない。
でもきっとすぐに、忘れてしまうんだろうな。
だって私は、こんな場所に、こんな長ったらしく、文を紡いでるんだから。

 

 

とてもとてもコアな(?)映画館だけど、世田谷線の往復も含めて好き、おすすめです、下高井戸シネマ。また行きたいと思います。
良い休日の締めでした。

 

では。